悪魔の証明
「本当に”すべて”ならそこに幸福はない。
自由意志を持たせてしまっただけで、完全ではないんだ。」
くんくんが言う。
「意志があると言うことは変わる可能性がある。
変わりようがないものが”絶対”だ。」
おっと、ヨガっぽくなってきました。
と、心の中で私は思う。
ヨーガスチッタブリッティニローダハ
心の動きを滅却することがヨーガであると
ヨーガ・スートラのはじめに書いてある。
くんくんは続ける。
「事実の集合が絶対なんだよ。」
一瞬前のAさん、今のAさん、一瞬先のAさん
それぞれが存在する。
過去があるという記憶がある？
それをどう証明する？
「悪魔の証明」というのがあるらしい。
何かがないことは証明できないから、
あると主張する者がそれを持ってこなくてはならない。
「いい？
10年分の記憶まで持っているクローンを考えてみればいい。
記憶を持っていても、そのクローンは10年前から存在していない。
”そう思っているだけ”
と言われたらもう、何もいえないんだ。
大勢でそう思っていたとしても事実である証明はできない。
”そうだ”と、信じるしかないんだ。
どうせ信じるしかないのだから、自分の信じることをやれ
という話だよ。」
確かにそれはそうだ。
やっぱりくんくんは前世でヨガをやっていたのか？
「ヨガの修行を終えた人の生まれ変わりだって？
違うといったでしょう？
ヨガの修行自体がそこからこぼれ落ちたものかもしれないよ。
一側面だけ見て、それを鵜呑みにしたら見失うよ。
本当に完全な者には明確な型なんてない。」
そこ、って何だろう？
修行中の私にはまだ見えない。
