きれいなもの
何年か前の話だけど、
くんくんが何か会社で失敗をしたらしく、とてもしんどそうだった。
毎日夜、終電近くに帰って来る。
細かいことを根掘り葉掘り聞くと余計に機嫌が悪くなるので、
とにかく、快適に過ごせる時間を少しでも多くと心がけるだけだ。
きれいなものを見たら和むかな。
そう思って、出かけた先でみつけたおもちゃのようなプラネタリウムを2つ買った。
土星が見えるのと満月が見えるものだ。
くんくんに今日はすごくいいものをみつけたよ、きれいなもの見て和んで。
そう伝える。
すると、くんくんはこう言った。
「きれいなものを見たいなら、両の目を閉じればいい。簡単なことだよ。」
物質社会に生きている私には、考えも着かない言葉だった。
くんくんが目を見開くような景色を見せてあげたいなあ。